滋味如桃源

電子的高級洗練世相講談

抱えきれぬほどのカネを拾う

  それは夕暮れだった。どこかの交差点で信号を待っていると、歩道と車道の隙間あたりにお札のようなものが数枚、落ちているのが見えた。しかし日は暮れかかっており、はっきりとはわからない。信号はまもなく青に変わりそうだったが、脇へ一歩踏み出して歩道の隙間に顔を寄せると、薄闇のなかに1万円札が数枚と、それからなぜか2千円札が見えた。財布から取り出したときのように、中心から折り目がつき重なっている。2千円札なんて珍しいな、と思いながらそれに手を伸ばした。確かにお札、本物である。

  さらにその周りを見渡すと、1メートルぐらい先にも同様にお札が落ちている。さらにすぐそばの車道にも落ちていて、自動車の風圧で蝶のように飛び交っていた。いかんなあこれは。私はあたかも自分が落とした金を拾うように、車道とその周辺に落ちている札を急いでかき集めた。

  交通量が多いので、こんなところで札を数えている場合ではない。飛ばないようにしっかりと胸に抱えたまま歩道へ戻り、歩き出すと商業ビルの一階に四方がすべて真っ白な通路があったので、そこへ飛び込んだ。

  両サイドのウインドウに、目隠しなのか内側から白い張り紙がしてあるようだった。私は何気ない歩行者を装いながら懸命に札の頭を揃え、それが結構な枚数であることがわかったときに気がついた。

「これは夢じゃないのか」

 その通りだった。

 時計は朝の6時半になっていた。

 

  自分が日頃夢を見ているのかなんか覚えちゃいないし、寝起き直前にこれだけリアルなものを見るなんて、なかなかないことだ。何かあるんじゃないかという気がして、眠い目をこすりながらスマホの電源を入れ、「お金をひろう夢」と検索してみた。

getnews.jp

 

  これがすごいのは、お金の夢についての話なのに冒頭の見出しが「硬化」となっていることだ。さらに少し先の見出しも「古い硬化」。これらは共に「硬貨」だろう。なぜ気付かないのか、本当に謎だ。

  それで肝心の「お金を拾う夢」だが、こう書いてある。

・お金を拾う夢

愛情に飢えている、あるいは愛情を感じられない状態を暗示します。
寂しさが夢に現れています。
ただし、愛情を欲求するばかりでは得られないことも、知っておきましょう。

  うるせえ馬鹿野郎、という感じだが、類似のサイトも見てみたがだいたいはこのように書いているようだ。くだらない。こんなもの根拠のない、占いじゃないか。